人と自然を未来に繋ぐ「しもかわチャレンジ」-林政ジャーナリストの会共同取材から(1)(2025/7/16)

林政ジャーナリストの会今年度第一回共同取材「広葉樹林業の可能性と広葉樹材の利活用(北海道)に参加しました。まず、下川町を訪問したのでそこから報告します。

2008年環境モデル都市_選定、2011年環境未來都市_選定、2017年 第1回ジャパンSDGsアワード_「SDGs推進本部長賞」受賞、2018年SDGs未来都市_選定

このように、国が主導する、「世界の先導となる低炭素社会への転換」(環境モデル都市の選定趣旨)、「中長期を見通した持続可能なまちづくりに向けて・・・経済社会環境の三側面をつなぐ統合的取組における相乗効果、新しい価値の創造を通じて持続可能な開発に取り組む自治体を支援」(SDGs未来都市について)、といった取組の第一線で、森林都市の取組をリードしてきた下川町です。

町長はじめスタッフの皆さんから「持続可能な地域社会の実現に向けて~人と自然を未来に繋ぐ「しもかわチャレンジ」という演題でお話をいただきました。その内容を中心に紹介しますネ

この原動力はなにだったか?

((下川町のバックグラウンド))

下川町SDGs未來都市計画のイントロに「地域特性」というセクションがあり、わかり易く説明しています。それに沿ってすこし背景と歴史を紹介します

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(下川町のチャレンジの背景)

下川町は、北海道の北部に位置する人口約3,000 人の町です。

町の面積644 ㎢(東京23 区の面積に相当)の約9 割が森林で覆われ(図1のとおり、85%が国有林、8%が町有林、7%が私有林)、豊かな自然資源を背景に、農林業を基幹産業とした農山村地域です。

左図のように、1901 年の開拓以来、農業、林業、鉱業を基幹産業として発展、1960 年代には15,000 人を超える人口を有したが、我が国の産業構造の変化等により基幹産業(農林鉱業)が衰退、銅鉱山の休山などにより、その後も1980 年の国勢調査では人口減少率が北海道1 位、全国4 位を記録する等、急速に過疎化が進行、地域の活力が低下していきました。

こうした幾多の危機や困難に対して、下川町民は知恵、工夫、行動で立ち向かい、乗り越え、発展してきたが、この過程において、他の自治体には無い独自の地域特性である「しもかわイズム」が形成され、2000 年代には、「経済、社会、環境の調和による持続可能な地域社会づくり」のコンセプトが生まれ、これまで約20 年以上に渡り取組みを進めてきました。(のだそうです)

(チャレンジの内容)

2007 年4 月1 日に施行した「下川町自治基本条例」には、同条例の目的や基本的立場を明らかにする条例前文に「持続可能な地域社会の実現を目指す」ことが位置付けられ、政府から環境モデル都市(2008 年)、環境未来都市(2011 年)、SDGs 未来都市(2018 年)等の選定を受けるなど、その実現に向けた取組みを推進しています。

地域資源である森林を最大限・最大効率に活用することを基本とし、持続可能な森林経営システムである「循環型森林経営」(環境モデル都市下川町行動計画のコンセプト)を基軸として、①森林総合産業(林業・林産業・森林バイオマス産業)の構築(森林総合産業特区地域活性化方針(20211総理大臣))、②超高齢化社会にも対応した新たな社会システムの構築、③森林バイオマス等の再生可能エネルギーを活用した地域エネルギーの完全自給と低炭素社会構築、を柱とした経済・社会・環境の三側面の価値創造、統合的解決による「持続可能な地域社会(森林未来都市)の実現」に向けた取組みを進めています。(以上SDGs未来都市計画将来ビジョンから)

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(地域エネルギーの完全自給などー一の橋地区バイオビビレッジ構想)

その結果、どんな集落になっていくのか、具体的な事例を見てみましょう。

中心市街地かから12キロ離れた「一の橋地区

めざすべき姿:超高齢化問題と仮炭素化を同時解決
①エネルギー自給の向上
②環境配慮建築の導入
③地域資源の活用による新産業創造。
④集住化による自律型コミュニティモデルの創造

(地域熱供給施設)

太陽光パネル(15kw)木質ボイラー(550kW)新設におる、集住化施設障碍者支援施設などに対する熱供給(右の図→)

(地域おこし協力隊)

限界化する集落再生を目的に「地域おこし協力隊」を導入

平成22(2010)年から21名を任用。
現在2名が隊員として活動中(地域食堂)。
退任者19名のうち町内定住者は10名(うち5名が起業)。
起業5名のうちーの橋での起業は4名。

活動内容:廃屋の撤去、ICT見守り、ハウス栽培、石窯ピザ販売、商品開発、生活・買い物支援、除雪、地域食堂運営、機能性植物栽培、環境保全、障がい者施設支援、集落支援型NPO法人支援、施設管理・水源管理

その結果65才以上の人口の割合が、2009年に52%だったのが、2021年には30%に

(農林水産省のサイトに農村の日常生活を支える機能の集約とネットワークの強化 取組事例 ①北海道下川町(一の橋地区)というわかり易い解説ページがあります)

以上が町長以下スタッフのプレゼン内容の概要です

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(FSCの認証に基づく循環型森林経営)

もう一つの下川町の森のトピックスが、下川町が2003年に北海道で一番早く(日本で12番目)くFSC森林認証を取得したことです。

なぜ、下川町で早いうちに森林認証の取組が進んだのでしょうか?

FSCのサイトに下川町森林組合というページがあり解りやすい解説があったので、紹介します。

下川町森林組合片岡事業部長(当時?)のお話です

(FSC認証のきっかけ)

下川町が2003年、FSC/FM認証を取得した当時、国内では、海外での森林破壊や違法伐採材が注目され、木材生産主眼を置いた国内の林業基本法が、「環境」というキーワードの盛り込まれた森林・林業基本法へと改正された時期でした

そうした背景もあって、もしもこの町の林業が衰退したら、この町がなくなるのではないかという危機感が自治体や町民の中で生まれました

。「そこで、下川町をはじめ森林組合や商工会、木工所、学校連合、道の出先機関、消費者などが集まり、『下川小流域管理システム推進協議会』を立ち上げて、下川町の林業をこの先どうするか考えることになりました

ちょうどその頃、国内ではFSC認証というものが西日本方面で認証取得に向けた動きが始まってきたタイミングででした。

講習会や講演会を通じて森林認証についての情報を収集して、協議会で話し合いを進める中で、地域の林業が適正な国際ルールの下で展開していかないと通用しないのではないかという話になりFSC認証取得に取り組むことになりました。(なのだそうです)

(下川町のFSC支援事業)

「例えば認証林ではない山で作業をするとき、その山の所有者にグループ認証に参加すればFSCの基準で手入れをして、施業の費用には町から助成金が出ますよと説明する。すると直ぐに同意書にサインしてくれるのです」。

10年ほど前から始まったこの下川町独自のFSC支援事業のおかげで、私有林の所有者は少ない自己負担で森林の手入れを行なうことができるようになっています。

この制度のおかげもあり、現在でもFSCへの参加はふえており、森林組合が生産する材はすべてFSC材になっている、(のだそうです)。

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もう少し、FSCのページを内容をかいつまみます

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しかし、これだけの手厚い補助制度を整備するだけのメリットを、町として見出せるものなのであろうか。

この問いに対して片岡さんは、下川町全体の森林整備が行き届くことがメリットだと言い切る。

整備が進めば下川町全体の木材蓄積量が上がっていきます。仕事も増えますし、それは森林組合で人を雇用できるということにもつながります」。つまり、雇用が生まれれば新たな消費や納税という経済が生まれ、巡りめぐって最終的には自治体にお金が戻る仕組みになるのだという

「また、町有林だけでFSCをやろうとしたら、自由に施業できるフィールドが4000ha強しかないので5年、10年とやっていくうちに作業するところがなくなってしまいます。しかも、私有林の所有者の方が積極的に山の手入れをするかといったら、現在の木材相場ではなかなか難しく、自主的に山に手を入れようとする所有者は3割~4割がいいところでしょう」。

林業は手を入れ続けることが不可欠だ。今やっておかないと将来の下川町の林業が成り立たなくなってしまう。そのためには山の手入れが必要で、山に手を入れるためには腰の重い山主をその気にさせる制度が必要なのだ。実際、山主の方に各種の補助金制度の説明をすると、持ち出しが少ないならやるよということになるケースが多いという。「助成制度は将来の下川町への投資です」

以上がFSCの取り組み内容です(FSCのページの内容が丸投げで、ごめんなさい

(先住民との関係)

町長の説明の中に、「1901年岐阜県から入植」というお話があったので、その時先住民との関係はどうだったのですか?と伺いました。

そうしたら、「上名寄の開拓」という文書を紹介いただき、以下のような記載を紹介いただきました(ほんの一部です)

北海道開拓とアイヌの関係には、様々ないきさつがあると思いますが、下川町の開拓は、上川アイヌの酋長川村イタキシロマの多大なる協力があったからこそであり、その川村家と友好にお付き合いしていた古屋達造氏の多大な功績により、団体移住が円滑に進みました。
第1陣は、明治34年、岐阜県高鷲村鷲見(現郡上市高鷲町)が中心
第2陣は、明治35年、岐阜県北濃村二日町(現郡上市白鳥町)が中心
中心人物は、岐阜県郡上郡鷲見村(その後、高鷲村)古屋太郎衛門、弟達造、藤原次郎左衛門など。
 

こんな歴史がFSC認証原則3の先住民の権利の中で、どのように反映されているかな?

興味があったので聞いてみました。そして調べてみました。

すると、アイヌの人々および関係団体の皆様へ(上川森林認証協議会/下川小流域管理システム推進協議会)というページがあり、以下の情報が発信されています

 

下川町は第3者機関による「森林認証」を取得し、水・土・環境・地域社会に配慮した持続可能な森林経営に取り組んでいます。

 その中で、下川町では、わが国の先住民族であるアイヌの人々の生活や文化、慣習等が森林と深く関わってきたことに鑑み、アイヌの人々の意見・要望を受け付け、同意を得ながら森林の管理を進めていくこととしております。

 つきましては、森林管理の進め方等につきまして、ご意見・ご要望等がありましたら、下記までお問合せください。

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お問合せ・担当窓口
上川森林認証協議会事務局
住所:旭川市工業団地3条1丁目2番15号 旭川森林組合内
電話:080-9616-3090
下川小流域管理システム推進協議会事務局
住所:上川郡下川町幸町63番地 下川町役場産業振興課内
電話:01655-4-2511

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