「平成林業逸史」が書籍化ー明治・昭和につづき・・・(2026/3/10)

この度大日本山林会から平成林業逸史という本が出版されました。

明治林業逸史、昭和林業逸史に続く3冊目の歴史本です。
702ぺージ、あとで目次をお示ししますが、12章、28節からなる内容豊富な書籍です

山林誌という月刊誌に投稿されてきた原稿が終了したので、出版物とすることになったそうで、不肖私も二節を分担したので(勉強部屋でご紹介)、新刊書をお送り頂きました。

20世紀の終わりから21世紀の30年間、基本法令が林業基本法から森林・林業基本法になり、グローバルな地球環境の視点を踏まえた森林政策や、木材のサプライチェーンの管理を踏まえた消費者とのコミュニケーケーションの広がり、など日本の森林政策のながれが転換する時期でした。

出版物の大日本山林会から了解をえましたので、冒頭の会長の刊行の辞と目次をご紹介し、勉強部屋が生まれた時期でもあるので(そのことは記載されていませんが)、勉強部屋としての、コメントをしてみました。

(平成林業逸史:刊行の辞by大日本山林会沢田治雄会長)

大日本山林会はこれまでに「明治林業逸史(正・続)』(昭和五年)および『昭和林業逸史』(平成十八年)を刊行してまいりましたが、いずれも日本の林業史に関心を寄せる皆さまより高く評価されています。それは、実際に現場で体験した多くの史実に基つくものであるからです。これらの偉業を前にして、平成時代の林業史の断片を集め、後世に残すことも当会の責務であると考え、多くの執筆者の方々に『山林』誌への寄稿をお願いしてまいりました。このたび、これらを取りまとめて刊行する運ぴとなりましたことを、大変嬉しく思います。

平成時代は1989年1月8日から2019年4月30日までの期間であり、国内でもさまざまな出来事が起こった時代です。林業を取り巻く社会的背景について、少し振り返ってみたいと思います。

平成元年には消費税(3%)が導入され、平成4年に自民党が与党から転落し、細川内閣が誕生しました。平成7年には阪神・淡路大擬災が発生し、平成23年には東日本大震災が発生するともに、福島第一原子力発電所での事故も発生しました。さらに、平成16年には新潟県中越地震、平成28年には熊本地震が発生するなど、大きな災害が相次いだ時代でもあります。

経済面では、平成時代初頭にバプルが崩壊し、「失われた10年」と呼ばれる長期不況が続きました。平成20年のいわゆる「リーマンショック」では、世界的な金融危機が深刻な影響を及ぽしました。

科学技術の分野では、平成時代初頭以降、携帯電話やインターネットが急速に普及しました。平成時代後半には計測技術が発展し、ドローンを活用した森林モニタリングも進展しました。

平成4年にプラジルで開催された「国連環境開発会議(通称地球サミット)」において、森林破壊が地球温暖化や生物多様性の喪失と関連していることが強調され、「森林原則声明」が採択されました。これにより、世界的に森林保全の重要性が認識され、日本もこのサミットを契機に、国内外の森林保全に関する支援を拡大しました。平成9年には「京都議定書」が採択され、森林が二酸化炭素の吸収源として位置づけられました。

地球環境問題への関心が高まる中、平成時代初頭には森林ボランティア活動が全国的に広がり、都市住民が参加する「里山保全活動」や「植樹活動」も活発化しました。平成13年には、ほぼ40年ぶりに「林業基本法」が抜本的に見直されて「森林・林業基本法」が制定され、森林の多面的機能を重視し、持続可能な森林管理が推進されました。平成19年には、森林整備を地球温暖化対策の柱の一っとし、「森林吸収源10年対策」を打ち出し、間伐や植林活動が強化されました。持続可能な森林経営認証の理解も進み、森林資源の持続可能な利用を目指して森林管理認証制度が普及しました。

このように、平成時代は森林を取り巻く社会環境が大きく変化した時代でもありました。一方で、国内では林業の衰退や荒廃する森林の管理が課題として残りました。これらの動向は、現在の令和時代にも引き継がれ、森林の持続可能な利用と保全の取り組みが続けられています。

「平成林業逸史」は『山林』誌で連載してきました。執筆者をはじめ多くの方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。原稿テーマや執筆者の選定にあたりましては、土屋俊幸・東京農工大学名誉教授を委員長とする「平成林業逸史」編集委員会を設置して、2019年から述べ七回にわたり議論を重ね選定いただきました。こに深甚なる謝意を表します。

令和7年12月吉日
大日本山林会会長
沢田治雄

ーーここまで、平成林業逸史からの引用です

平成林業逸史目次

以下の通り12章、28節です

 『平成林業逸史』刊行の辞 大日本山林会会長 沢田治雄

政策一般
平成期における政策転換について(田家邦明)
平成初期における木材貿易情勢ーウルグアイ・ラウンド終結を巡ってー(沼田正俊)
京都会議も終盤に大混乱ー森林の取扱いを巡ってー(井出光俊)
新流通・加工システム、新生産システムの立案に関わって(山田壽夫)
「森林環境税」と「森林環境譲与税」成立までの経緯(辻一幸)
違法伐採対策の経緯とその展開についてーグリーン購入法による違法伐採対策とクリーンウッド法の制定ー(上河潔)
観光と地域振興(大浦由美)
メディアから見た乎成期における日本林業(赤堀楠雄)

.林業経営
吉野林業における伐出体系の変遷(岡橋清元)
FSC認証から見る日本林業(速水亨)
自伐林業としての取り組みー楽しむ林業ー(橋本光治)
山長の林業経営と紀州材一貫生産体制について(榎本長治)
ノースジャパン素材流通協同組合の誕生から発展の回顧(下山裕司)

むらづくり
山里杉沢に暮らすー暮らし考房三0年の記録その前半ー(栗田和則)
共に生きるムラー暮らし考房三0年の記録その後半ー(栗田和則)
元気な村づくりー農村と都市の結婚ー(外山京太郎)
もり
西粟倉村林業の盛衰と「百年の森林構想」(青木秀樹)
自然ともに生きる町を求めて半世紀ー宮崎県綾町での取り組みー(河野耕三)

国有林
ー国有林の抜本的改革(前田直登)·…•…·
‘全林野、日林労の組織統一と国有林野事業の一般会計化(岩崎春良‘
知床におけるダム改良の障壁と突破の秘話ー公開の議論が力になるー(中村太士)
自然保護、生物多様性と国有林ー「赤谷プロジェクト」という協同事業を中心にー(横山隆一)•

林業技術
森林計測技術の革新と森林計画の実際(松村直人)
平成期における林業機械開発秘話(川崎智資)
林道と作業道ーその歩んだみちと未来ー(小原文悟)

人材育成、普及・ポランティア等
林業大学校の教育ー岐阜県立森林文化アカデミーの取り組みを中心にー(横井秀一)
出会いを原動力にーレディースネットワーク・21誕生秘話ー(塚本愛子)
日本型フォレスターができるまで(田村典江)
平成期における森林・林業の時代背景と森林ボランティアのひろがり(田中惣次)•
多様な人々のかかわりが多様な森林を育む‘ー森林づくりの市民団体ネットワーク「森づくりフォーラム」創立前後ー(中沢和彦)
子ども樹木博士制度とその発展(木平勇吉)•

野生動物・獣害
野生動物管理と森林管理(梶光一)
平成のシカ問題(小泉透)

災害・防災
平成時代における治山事業の変遷(太田猛彦)
平成三年台風一九号による森林被害とその後の復旧(井上明夫)
北海道南西沖地震」函館営林支局災害復旧ドキュメント(橋本智)
脱ダム宣言から二0年(片倉正行)
3.11東日本大震災と福島県の林業・木材産業(宗形芳明)
東日本大震災からの復興に向けた森林組合の取り組み(高橋幸男)
福島原発事故と県林業職(木村憲一郎)
平成二十六年広島市土砂災害対応に関わって(木下仁)

木材工業
平成時代における木材利用の変遷ーそれが進んだ経緯、現場事情等ー(大熊幹章)
木材利用はどのように変わったかー木造住宅、木造建築物の変遷との関わりからー(有馬孝橙).、
スギ材乾燥への挑戦ー割れ防止と低コスト化を可能にした高温セット処理ー(久田卓興)
ネダノンの開発の背景(神谷文夫)
平成時代における構造用集成材.CLT等の進展(林知行)
機械プレカットの開発とその変遷(坂田幹人)
我が製材業の経営ビジョンー日向モデルを中心にー(堀川保幸)
国産スギ製材工場がツーバイフォー_ディメンションランバーの生産に取り組むまで(佐川広興)
日本の木材事情とCLT、バイオマス(中島浩一郎)
外周駆動ベニャレースの開発による合板産業の発展(長谷川英生)

新素材・製紙産業
平成期における製紙産業(辻本直彦)
平成期製紙業界の側面史(上河潔)
製紙化学からナノファイバー科学への取り組み(磯貝明)
森を抜けて街に出るーセルロースナノファイバー材料の開発と実装ー(矢野浩之)
我が国における木質バイオマスエネルギー利用の展開(加藤鐵夫)

林産物貿易等
日米貿易紛争と木材貿易ー平成初期の紛争の背景と今後への示唆ー(藤原敬)
日本産木材の輸出拡大に向けた取組(井上幹博)
木材商社の国産材ビジネス(淡中克己)
欧州産木材輸入の経緯と展開(佐藤進一)
海外産業植林の展開と今後の課題ー紙パルプ産業の木材原料調達史での位置づけー(大渕弘行)
生しいたけのセーフガード発動の記録ー「やれるところまでやってみよう」と決意し突き進んだ日々ー(小原文悟)`

認証制度等
SGEC森林認証制度の創設とその後の展開(志賀和人)
国際森林認証制度SGEC/PEFCの実現ーSGECの創設及びPEFCとの相互承認とその後ー(中川清郎)
FSC森林認証の創設と普及・展開(前澤英士)
カーボン・オフセットクレジット制度の創設とその展開ー民間資金が次世代の森林づくりに投入される一っの可能性(藤原敬)

著者略歴

あとがき(土屋俊幸)

目次は以上です

(勉強部屋が関わった二つの節)

プライベートなことになりますが、私も2節投稿させていただき、山林誌に掲載されるタイミングで、(了解を得て)勉強部屋に掲載させていただきました

日米貿易紛争と木材貿易ー平成初期の紛争の背景と今後への示唆(2023/4/15)
カーボン・オフセットクレジット制度の創設とその展開ー民間資金が次世代の森林づくりに投入される一っの可能性(2023/10/25)

どちらの節も勉強部屋としては、地球環境や森林のグローバルなガバナンスと日本の森林行政を結ぶ重要な分野の活動で、このような形で重要な文献に掲載していただける(目次のアンダーライン部分)のは本当にありがたいことです。が・・

掲載箇所は、全体のフレームの中で後ろの方に二つ収録されています。平成の林政史の中ではメジャーな分野でないことを表していますね。

(勿論不満があるわけでなく)グローバルな視点が現時点での日本の森林政策の組みの中でどの位置にあるのかの客観的評価を正確に反映しているだと思います。次の「令和林業逸史」ではどうなるのか、興味深いですネ。

kokunai0-3<heiseihisbook>

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