「私たちの電気代が支える偽りの気候変動解決策」を読む(2026/4/9)

3月にNPOバイオマス産業社会ネットワーク理事長泊みゆきさんから、新刊本をいただいた。

題名は:私たちの電気代が支える偽りの気候変動解決策ー輸入木質バイオマス発電をめっぐって

((新刊本をいただいた背景説明ーイントロ))

御案内のように13年前にFIT・FIP制度(固定価格買取制度)ができ、化石資源に依存しない再生可能電力を普及するために国が補助金を出すのでなく、その分の電力を消費者が少し高い値段で買う、というすごい制度ができ、その中に太陽光発電風力発電などとともにバイオマス発電がはいりました。

このサイトでもエネルギーと指標いうカテゴリイの中に1.循環社会とエネルギー・バイオマスエネルギーというサブカテゴリを設置して応援してきました。

(バイオマス燃やして発生するCO2はカーボンニュートラル!??)

そして、林野庁のサイトに「森林を構成する個々の樹木等は、光合成によって大気中の二酸化炭素の吸収・固定を行っています。森林から生産される木材をエネルギーとして燃やすと二酸化炭素を発生しますが、この二酸化炭素は、樹木の伐採後に森林が更新されれば、その成長の過程で再び樹木に吸収されることになります。とあるように、木質バイオマスを燃やせば二酸化炭素は出るけど、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えないというカーボンニュートラルな特性を有していいるので地球環境防止に貢献します。

これが、森林関係者の木質バイオマス発電にいだく、わかり易いコンセプトで応援するのですが(私も含めて)・・・環境問題のプロフェッショナルである方々は、以下のように系統的に3つの観点で、批判を展開してきました(勉強部屋でもしっかりフォローしてきました)

(リスク指摘1:木質バイオマス原料供給源の森林が環境破壊!!)

バイオマス燃料が持続可能な原料から提供されることが条件で、出所を探しそれを確認し、製品を分別管理するのはものすごく難しいので、難しい課題を抱えています(FSC認定木材でもダメな場合があります→FSCミックスの中に何がミックスされているか?FITとFSC続き(2020/7/15)

(リスク指摘2:バイオマス原料の作成過程でGHGが発生します)

木質バイオマスエネルギーは厄介な問題を抱えている!?ー課題と期待(2022/4/26)でも紹介したように、3. 栽培、加⼯、輸送、燃焼など各段階でGHGが排出します

(リスク指摘3:バイオマス発電とカーボン・ニュートラルの嘘)

上記ー課題と期待(2022/4/26)でも紹介したように、2. 森林減少・劣化による炭素ストックの減少します、カーボンニュートラルとは言えません

((「私たちの電気代が支える偽りの気候変動解決策」の内容))

イントロが長くなりました、本の内容をご紹介します。目次は以下の通りです

 まえがき

第1章 FITバイオマス発電の概況
1 バイオマス利用の概要
2 輸入バイオマス発電とは

第2章 木質バイオマス発電のCO2排出量の算定
1 木材・木質バイオマスの燃焼により、石炭より多いCO2を排出
2 木質バイオマス発電の燃焼によるCO2排出量

第3章 燃料生産地の課題
1 輸入ペレットの急増
2 輸入ペレット生産地の課題
コラム ベトナム木質チップ工場の実情
コラム カナダ・ブリティッシュコロンビア州のペレット工場―貴重な森が含まれる土地から多くの丸太を調達
コラム インドネシア・スラウェシ視察レポート
3 生産地の課題まとめ

第4章 持続可能性の確認方法
1 FITガイドラインと持続可能性ワーキンググループ
コラム パーム油認証とFIT
リポート 地域住民とNGOによるパーム油発電反対運動の成功の軌跡
2 FITバイオマス持続可能性基準をめぐる動き

第5章 海外の状況
1 EUREDⅢ
2 EUDR
3 EUDRとカナダの原生林伐採─政府が独自の「森林劣化」定義に動く
コラム 森林バイオマスのエネルギー利用に関する科学者のレター
コラム  韓国政府がバイオマスエネルギー政策を転換―輸入木質バイオマスへの補助金を停止・削減
コラム バイオエネルギーの気候・自然リスク─国際的なサステナブル投資家ネットワークも懸念
4 BECCS(バイオマス発電由来CO2の分離・回収・貯留)
コラム CCSの経済合理性、安全性についての懸念

第6章 木質バイオマス燃焼による気候変動への影響評価─算定方法の再検討
1 温室効果ガス算定方法における対象と期間─国別インベントリ、
  事業者インベントリ、ライフサイクル評価
2 ネットゼロ目標
3 森林部門の「ネットゼロ」とは
4 生物由来CO2排出量の企業としての報告
5 自然吸収の算定方法
6 木質バイオマス燃焼時のCO2排出ゼロという考え方
7 土地利用変化による排出量の計上
コラム 林地残材、製材端材、建設廃材などの燃焼によるGHG排出について
8 燃料材の帰属可能な算定範囲とは?
9 影響評価の再検討 ベースラインのインベントリ分析がゼロでない場合
コラム  CDP「気候変動質問書」とバイオマス燃焼のCO2排出─多くの事業者が適切な報告をせず

第7章 木質ペレットに関わる爆発・火災事故

第8章 今後の木質バイオマス利用
1 バイオマスの利用法
2 バイオマスの熱利用─2050年カーボンゼロに向けた熱分野の脱炭素化
3 今後のバイオマス利用の方向性

あとがき
 







ーーー

今回の書籍はNGOの方々が展開していた今までの木質バイオマス発電リスク評価の集大成ですね

リスク評価1木質バイオマス原料供給源の森林が環境破壊!!)については、なかなか情報収集するのが難しい課題です。

特にインドネシアとか、ベトナムなどの途上国では、サプライチェーンの方からは、ビジネスに不利な情報なので伝わりません・・・・ここが環境NGOの真骨頂ですね。第3章がそれに充てられています。ベトナムでのFSCの偽装問題、カナダの日本向けペレット生産による原生林破壊、米国では南部の森林地帯の森林へのインパクトと、大規模ペレット工場が周辺住民に与える大気汚染、ベトナムでは大規模伐採などなど・・・この書籍でしかわからない貴重な情報です

リスク評価3バイオマス発電とカーボン・ニュートラルの嘘

バイオマスはから排出されたCO2は、国際的な枠組み条約の中では森林吸収量のカウント場面で、伐採による排出というように評価されているので、エネルギー発生場面(発電所)ではダブルカウントされないように、バイオマスの原料投入からCO2は無視されています。それが誤解の元で国別の報告などを例にとって、丁寧な説明が第6章でされています。

そして、どれだけの量のCO2が発生されているか?同じ電力をうみだすCO2の量はバイオマスが石炭より多いなど第2章

などが、具体的事例に基づき、わかり易く? 紹介されています

それでは、森林関係者抱えている以下の疑問にあらためて回答されされてのでしょうか?

((それではバイオマス燃焼で発生するカーボンニュートラルではないの?))

結構重要な論点ですが、林野庁が主張するバイオマス燃料で発生するCO2はカーボンニュートラルなのか?NPOが主張するようにカーボンニュートラルは嘘なのでしょうか?

私はこのすれ違いは、昔勉強部屋の「厄介な問題」を正面から―木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論についてで指摘したように「時間軸の違い」だと思います

化石資源社会から将来の循環社会への取組、という時間軸で見た場合バイオマスは化石資源でないので、循環社会となった将来も発生するCO2なんで、ニュートラルなのですが・・・・

今はそんなことは言っていられない、2050年までに排出量と固定量、吸収量をニュートラルにしなければ取り返しができないことになるはず、という状態を考えると、いつ吸収されたCO2だなんて言っていられない!!というのが、IPCCなど対応方針を検討する人たち(NPOの人たち)がかたる、主張の根底にあるのだと思います。

時間軸をしっかり意識して意見をする合わせる必要がありますね

だから、バイオマス発電は、だめなのでなく、本当にしっかりリスク管理をしたうえで、慎重に取組む必要があるのだと思います。

あらためて、この本を読んでみて再認識しました。

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