ニュースレター No.289 2023年9月15発行 (発行部数:1663部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:大地に根付く友好の森林ー日中緑化交流基金の活動記録(2023/9/15)
2. 森林宣言評価:我々は 2030 年に森林の世界目標を達成できるか?(2023/9/15)
3. 勉強部屋ZOOMセミナー第4回ご案内(2023/9/15)
4. 木密地域とはー100年前の関東大震災の教訓(2023/9/10)
5. オール国産材住宅の供給スキームー双日建材の取組(環境ガバナンスと日本企業2)(2023/9/10)
6. 「全国森林計画」案パブコメ対応ーグローバルの動向に対応した日本の森林森林計画に(2023/8/25)
7. 森林の交流蓄積がグローバルな二国間関係の財産になるか・・・ー勉強部屋ニュース289編集ばなし(2023/9/15)

フロントページ:大地に根付く友好の森林ー日中緑化交流基金の活動記録(2023/9/15)

1972年に日本と中国が外交関係を結んで国交正常化してから50年が経ちましたが、二国間の関係は不安定な状況です。(中国、日本産水産物の加工・販売を禁止

東アジアの大国中国との関係をどう構築していくかは(国としても市民としても)大切な課題ですが、最近、「日中緑化交流基金」という団体が2020年に出版した「日中緑化交流基金終了記念誌ー「大地に根付く友好の森林」という書籍を読む機会がありました。

日中の関係者が中国の森林づくりに20年間取組んだ記録!森づくりという大地に記録される共同作業の大切な記録が、次世代に向けてしっかり残っていくように、内容を紹介しようと思います。

(小渕基金と交換公文ー背景説明)

中国では、1998 年の長江の大水害を契機に、水士保全機能を強化し自然災害を防止するため、各種の植林緑化事業が国を挙げて進められていました。

このような中国の植林活動を支援するため、当時の小渕恵三内閣総理大臣は、1999 年7月の訪中にむけて「総理大臣と中国植林に関する懇談会」を実施し(右の図がメンバーの写真)、これに基づいて100 億円規模の基金設立構想を発表し、これを受け、同年11 月19 日、日中両国政府間で交換公文が取り交わされました。

(日中緑化交流基金の設置と事業内容)

この交換公文により、日中民間緑化協力委員会が設置され、同時に同委員会の事務局である日中緑化交流基金が設置されました

その後、日中緑化交流基金では、中国側の窓口である中国国家林業局対外合作項目中心と協力して、2000 年度から日本の民間団体が中国側団体と協力して行う植林緑化事業に対し助成しました(29省・自治区などに277件のプロジェクト、累計71,478haが植林、日本側81団体、中国側71団体、記念誌資料編にリストがあります)。(写真左中学生と一緒にポプラをうえる宮崎日中友好協会)

また、中国側政府機関と協力して、森林造成技術の指標を示す指標林の造成(退耕還林指標林・砂漠化防止指標林海岸防災指標林)や地震被害に対する復旧の支援(右の図四川省大地震被害対策植林)などにも取り組んできました。

また、こうした植林事業の実施を通じて日中合同のボランティア植樹などの交流活動が行われたほか、中国での日中国交正常化記念等の記念行事の開催(左の図日中正常化30周年記念式典)や絵画コンクールの実施などを通じて、日中両国民の間の友好交流がすすめられました。

小渕基金と呼ばれる日本政府から拠出された100 億円の日中緑化交流基金は、このような成果を上げ、所期の目的を達成したことから、2021 年3月末をもって事務局を閉鎖しました。

この記念誌は、その成果について報告したものです。

以上(記念誌のはじめにの部分などから)

(記念誌目次とデータ)

日中緑化交流基金終了記念誌目次  page  PDF
はじめに  1 分割1 
日中緑化交流碁金終了にあたって  4 同上 
日中緑化交流基金発足の経緯  8  同上
日中緑化交流基金による事業の成果 9 分割2 
 中国での植林活動 9 同上 
  助成事業  9 同上 
  技術・管理面での取組 31 分割3 
  日中緑化協力記念林 31 同上 
  災害復旧緊急植林 32  同上
  日中緑化協力指標林 32 同上 
  中国の大地に根付く 33  同上
 友好交流をすすめる 34 分割4 
  記念行事の開催・  34 同上 
  少年児童絵画コンクールの実施  38 同上 
  友好交流の促進への期待  41  同上
【資料編】 42 分割5 
  日中民間緑化協力委員会開催実績  42 同上 
  日中緑化交流基金事務局体制  43 同上 
  中国側事務局体制  43 同上 
  日中緑化交流基金運営委員会委員  44 同上 
  現地巡回技術指導  45 同上 
  助成事業一覧  46 分割6ー1
6-2 
  日中民間緑化協力委員会の設置に関する日本国政府と中華人民共国政府との間の交換公文  80 分割7 
 一括版ダウンロード (少々お待ちください) こちら 

(揺れた日中関係ー友好・対立・協調・・・の中での緑化交流)

下の図は揺れた日中関係ー友好・対立・協調・・・(日経新聞に掲載)とする記事(2018年10月公開)に掲載されていた40年間の日中関係を示す図です。

縦軸は日本と中国の名目GDP 、ピンク色の表示が日中間が良好な時期、青の表示が関係が悪い時期、灰色が波風が少ない時期。そこに上記の日中緑化交流基金の活動時期を入れてみました。

72年に国交を回復し、78年に友好条約が結ばれました。

90年代の中ごろまでは、中国は経済経済建設を加速させるため外資導入を重視し日本もODA円借款を供与。中国大陸に新たな市場と資源エネルギー源をの開拓を求める日本側と、近代化のために西側諸国の資本導入をもとめる中国側の思惑が一致して良好な関係が・・・官民のさまざまな交流が広がっているかなか緑化交流基金の活動は始まりました。

その後、中国のGDPが拡大し日本から学ぶ・依存するという側面がうすくなり、「戦略的互恵関係」の包括的推進2028年日中共同声明)といった難しかじ取りが必要になってきています。そのような中で、尖閣列島問題、台湾有事問題など。

(「大地に根づいた友好の森林」の蓄積の出番)

このような時にこそ、「大地に根づいた友好の森林」の役割が大切になってくるように思います。

20年間の事業終了直後の記念誌では、7万ヘクタールの造成森林がいったいどのようになっているのか、リアルな情報がよくわかりません。砂漠化、海岸、退耕還元林といった難しい条件のもとに形成された指標林の成果(ココは想定外で失敗だったという情報も含めて)がみのるのは、今後のことであるのは間違えありません。

この記念誌の情報がしっかり次世代にひきつがれ、新たな蓄積がつみかさねられることを期待しましょう。

最後に、記念誌の最初の部分に掲載されてる、日中両国の外交当局者の紹介しておきます。

ーーーー日中緑化交流基金の終了にあたって(2020年10月)(原文はこちらP4とP6(日本語)P5とP7中国語)

 日本国外務省アジア太平洋局参事官 遠藤和也 中国国家林業・草原局対外合作項目中心副主任許強興
 中国語に「前人栽柑、后人乗涼(先人が木を植え、後人がその蔭で涼む)という 言葉があります。日中民間緑化協力は、まさにこの言葉を体現したものであると考えます。本事業では、約20年間にわたり地道な日中協力が積み重ねられてきました。今後とも、外務省として、その成果の下に「涼む」のでなく、その礎の上に、新時代にふさわしい日中関係を構築すべく、たゆまぬ努力を続け、日中双方の関係者の協力を得つつ、皆が集える、より大きな木に育てていきたいと存じます。
末筆ですが、これまで日中緑化交流事業にご尽力くださった日中双方の皆様に対して、改めて心より感謝申し上げます。
中日両国は「一衣帯水」の近隣でありながら、アジア及び全世界においてもともに重要な影響力を持つ国家であります。これまでの20 年間、我々は如何なるときでも協力関係を保持してまいりました。またこの事業を通じて多くの日本の友人を持つことができました。このような経験は必ず未来の更なる協力の礎になると確信しております。中日新時代に向けて、中日民間緑化協力事業がプラットフォームとなることを期しながら、皆様と共に協力関係の前進に努めたいと思います。 

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森林の交流蓄積がグローバルな二国間関係の財産になるか・・・ー勉強部屋ニュース289編集ばなし(2023/9/15)

フロントページは、大地に根付く友好の森林ー日中緑化交流基金の活動記録

久しぶりに日林協本部に挨拶にいったら、いろんな人と立ち話をしているうちに、日中緑化交流基金(小渕基金)の事務局で仕事をしていた方とバッタタリ。

百億円の基金をつかって20年間、日本と中国の民間団体が森林と人間関係をつくる仕事を支援してきた基金が仕事をおえて解散し、その記録誌があるけど、ネット上に情報がないようなのです。

解散した団体が作成した本の著作権がどうなるの?と思いましたが、関係者と相談して書籍のオリジナルをデジタル化して、勉強部屋に掲載することにしました。「大切な蓄積をしっかり次世代につなげたいー」という趣旨なので、だれもだめだとは言わないでしょう。できれば中国語でも発信したいけれど少し準備が必要です。

次世代の小渕基金がどこかに計上されている、という話も聞くのですが、日中両国の関係者(森づくりの関係者)の意見が大切ですね。すこしでも役にたてれば嬉しいです。

9月13日に行われた自民党の役員人事で小渕基金創設者の次女小渕優子氏が党の顔として抜擢されましたが、次期の小渕基金の行く末と関係があるかもしれませんね

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9月1日の100年前は関東大震災。

火災により被害が拡大した歴史を学んで、朝日新聞の一面トップの見出しが「「木密」、原点は江戸城下町 震災や戦災復興後、延焼リスクは何度も」

まえから気になっていた「木造住宅密集地域」ということば。木造でなければ密集しててもいいの?とりあえず、この言葉を行政上つかっている東京都の木密地域の定義でも、木造建築を根拠とした規定になっていないことがわかりました。

いま、木密地域という言葉を使ってるのは、東京とほかどこなのか?しっかり調べていませんが(国土交通省や大阪府はは密集市街地という用語を利用)マスコミがTOPで取り上げる見出しにあるので、みんな木造の密集地域は悪者という共通意識があるのでしょう。

木造でも防火性能を認めていく法令改定の方向とか、不燃木材などの材料が開発されてきている最前線の情報を、市民に共有することの大切さ。勉強部屋も頑張ります。

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ZOOMセミナー第3回目生物多様性を巡る国際動向:COP15とビジネス、政策への示唆は10月14日、あと一か月になりました。生物多様性の保全は森林にとって重要な課題。どんな指標で見えるかする化など大きな課題がありますが、学会の一人者と、ベンチャービジネスのリーダお二人をゲストに迎えて開催します。どうぞご参加ください。

そして12月2日に開催される、第4回『森と建築を一緒に考える』とどんな世の中になるのかな?ー建築関係者と一緒に考える。ご案内公開しました、ご期待ください。

なお、過去開催されたセンナ―の内容が勉強部屋のページで公開しています。なおアーカイブ動画は限定公開で、会員になるとご覧になれます。ご検討くださいね

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それではよろしくお願いします

次号以降の予告。林業経済研究所のピンポジウム「森林と健康の新時代」報告/ 無花粉スギ、コンテナ苗と広葉樹林業の可能性/ 「ナラ枯れ対策と広葉樹林業の可能性/ バイオマス発電燃料GHGでこの燃料はリスクある?森林・自然・気候の新カントリーパッケージ new Country Packages for Forest, Nature and Climate

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com