ニュースレター No.262 2021年6月15発行 (発行部数:1580部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:消費者と森林ガバナンスを結ぶ森林認証システムー日本における現状と課題(2021/6/15)
2.  「論語と算盤」で持続可能な森林は?ー渋沢栄一の中の森林の位置(続き)(2021/6/15)
3.  米国で史上最大の林業の実験ーNature誌news(2021/6/15)
4. 新に木材利用促進法ー公共建築物木材利用促進法改正案成立(2021/6/15)
5.  持続可能な木材需要と違法伐採対策における合法性確認アプローチ(2021/6/15)
6. 次世代の森林の行方・カーボンニュートラルは?ー新森林・林業基本計画を読む<1>(2021/6/15)
7. 持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第1回御案内(2021/6/15)
8. 消費者と森林ガバナンスをつなぐツール森林認証ー勉強部屋ニュース262編集ばなし(2021/6/15)

フロントページ:消費者と森林ガバナンスを結ぶ森林認証システムー日本における現状と課題(2020/6/15)

6月2日は、午前中一般社団法人緑の循環認証会議SGEC評議委員会が、午後はNGO森林認証協議会FSC通常社員総会が開催されました。

私は午前中は会議の座長、午後は一会員として、日本の二つの森林認証を管理する団体の年度の事業を総括する会合に出席しました(両方の会議に出席した人は他にはいないかな?)。

森林認証制度といえば、各国の森林の管理をするという課題を、行政でなく市民と民間団体が管理するグローバルな仕組み!長年積み重ねてきた森林法による我が国の森林管理のシステムが、グローバルな目からみてどんな課題を抱えているのかな?ということがわかる、興味深いテーマなので、このサイトでも関心をもって追いかけてきました。

森林認証についてのメニューページ

東京オリパラ大会に向けた新規建築国立競技場が、各都道府県の認証森林由来の木材をもとめるなど、森林認証を巡る大きな環境の変化のもとで、可能性と同時に持ち色んな課題が気になりなったので、情報を整理してみます。

(日本の森林認証を巡る進展の動向)

下の図は、認証された森林の面積と、COC(加工流通業者の分別管理責任)認証された事業者数の推移です。会議に出席してから、パフォーマンスを示す2つの指標について双方の数値を同じ表にまとめたものがないようなので、作成してみました(面積については森林・林業白書に19年までのものが掲載されていますが、最新版でCoCがあるのは勉強部屋だけ!(たぶん))。


データの出所:FSC https://fsc.org/en/facts-figures  SGEC 緑の循環認証会議暦年の会議資料

認証された森林はあわせて2583千ha(2021年4月現在)となり、日本の森林面積2501万ha(新森林・林業基本計画)の10.3%、1割を超えました!

そして二つの組織別にみると認証森林はSGECが進み、FSCは停滞。そして、COC認証企業の方はFSCが進み、SGECは停滞しています。

二つの組織の方々と話をしてみて課題を探ってみました。

(SGECの森林認証面積拡大の背景)

SGECの森林認証面積の拡大の背景は、東京オリパラ木材調達で、森林認証材が優先され(持続可能性に配慮した木材の調達基準)、また、国立競技場の建設過程で47都道府県の森林認証材利用するという方向になり(国立競技場の軒庇)急きょ森林認証材の拡大が進んだことです。

施行を請け負った会社がSGEC材を調達することとなり、「これまでに森林認証材を持たなかった県も、林野庁、地方自治体、地元民間企業などの協力により、このたび全都道府県で認証森林が確保されました」とされています(新国立競技場で47都道府県のSGEC認証林からの木材が調達されることに決定)。

ここで、ポイントになるのが、第三者の認証機関が認証する森林認証のプロセスの中で、地方自治体などの行政機関がどのような、関係になっているかです。その一つの形態が、グループ認証という制度です。

(グループ認証の課題)

SGEC-FM認証(森林認証)事業体リスト(2021年3月31日現在)をみると、森林認証の取得事業体の欄に「〇〇地域森林認証会議」といった名称がたくさんあり、その行には「グループ認証の参加者」という列に、沢山の森林組合などが並んでいる場合があります。SGEC認証森林216万ヘクタールのうち、半分以上の112万ヘクタールが「グループ認証」です。

通常、森林認証機関が、ある森林を法的に管理する責任をもっている森林所有者に対して、森林の現状と経営方針とその実態をチェックして持続可能性を確認して認証するという手続きですが、森林所有者が小規模で単独では認証をとるための手続きが進められない場合、グループリーダーが地域内の森林所有者をまとめて、認証機関との手続きに対応する、という仕組みです(SGECグループ森林管理認証の要件,FEC4森林管理グループ認証).

具体的に視てみましょう、SGECの~信州カラマツの故郷~ 佐久森林認証協議会 というサイトが面白いです。佐久市長が会長、11の市町村が持っている市町村有林を25千ヘクタールをまとめて認証をしています。佐久市の関連ページに理念と基本方針、管理運営マニュアルなどの文書が公開されています。

ただし、その他のグループではその内容がネット上では十分に公開されていないところが多いです。森林認証の場合、基本となるのは認証機関が森林の管理所有者をチェックする仕組みですが、グループ認証の場合認証機関がグループリーダーである協議会をチェックし、グループリーダーが加盟者をチェックするという二段階になっています。あるいは三段階?もあるようです

システム構築する人は一生懸命でも、現場段階では海外でできた面倒くさい森林認証システムが何のことか解らず、ただ、持ってきた書面にハンコをおしたら手続き終了、といったことにもなる心配があります。

いずれにしても、小規模な所有者が多い我が国の森林管理には不可欠の、このグループ認証システムです。急拡大したこのシステムを信頼性を確り守っていく体制が必要でしょう。

(FSCのCOCが活性化していますが?)

さて、もう一つのFSCは前述のように認証森林は増えないけれど、COCがどんどん拡大中。

FSCとPEFCのCOCの企業の数の違いは、消費者が目にする紙製品や消費財の紙パッケージに記載しているマークの違いに関係があるんだそうです(とある、認証機関の方がいっていました)

サントリーグループ、FSC認証を取得した商品梱包用段ボール包材を順次採用

マークをみて消費者がFSCマークとPEFCマーク、何もないマークのものを選別しているのか、というと、そうではなく、消費財を製造しているメーカが投資家を視て選別をしているんだそうです。

ESG投資といった市場の動きに対応して考えると、FSCの方がPEFCよりも強い。

FSCジャパンセミナー「SDGsに貢献するFSC-環境・経済・社会のバランスを保つ森林管理の現場から-」

それでは、FSCの森林認証が増えないのはなぜ?市場のパワーが森林所有者に届いていないのでしょうね。

(二つの仕組みの原動力)

以上のように、行政のパワーを背景としたSGEC、市場のパワーを背景としたFSCといった姿がみえてきます。

森林管理という難しい課題を、消費者とともに取り組んでいこうという、森林認証制度の築いてきた土台の上に、どのような構築物を造っていくのか?、今後とも関心をもってフォローしていきます。

sinrin1-20<JFcertkadai>

■いいねボタン

  「論語の算盤」で持続可能な森林は?ー渋沢栄一の中の森林の位置(続き)(2021/6/15)

NHKの大河ドラマ、青天を衝(つ)けについて、についてl、「論語の算盤」で持続可能な森林は?ー渋沢栄一の中の森林の位置(2020/3/15)をおとどけしてから、読者の方に、大切なことを忘れているよ!とアドバイスを受けました。

(渋沢栄一と同郷の森林学者本多静六)

森林の関係者なら多分ご存じの方が多いだろうと思いますが、東京山林学校首席卒業日本で初めての林学博士本多静六

東京帝国大学農科大学の教授で、日本ではじめての近代的都市公園でもある日比谷公園の設計者でもあります。埼玉県出身の本多静六は同郷の有名人物である渋沢栄一とは色んな関係があるんですが、明治神宮の話をピックアップします。

(明治神宮設立の中心となった渋沢栄一と神宮の森設計者本多静六)

1912年7 月 、明治天皇が亡くなると、渋沢栄一は東京市長(栄一翁の娘婿)ら民間有志たちと協議して、明治天皇の陵墓を造ろうと運動を起しましたが、陵墓は京都伏見(桃山)に内定しているとのことで、有志の運動は、明治天皇を祭神とする神社建設の方向になり、これが明治神宮の設立のきっかけなんでそうです(渋沢栄一と神社(「明治神宮をつくった男」渋沢栄一の葛藤)

御案内のように、明治神宮の森は、椎、樫、楠などの常緑広葉樹を主たる構成木から成っています。(明治神宮社(もり)のみどころ

造成前の神宮内苑用地の殆どは雑草生い茂る荒蕪地(こうぶち)で、しかも隣接する鉄道からはばい煙が出て大気汚染に弱いスギは育たない。ここに神宿る「永遠の杜(もり)」をどのように造成すればよいか。それまでの神社林は恵まれた立地の自然林であって、大自然の力が「永遠の杜」を支えていた。ならば、いかに自然林に近づけられるか。本多静六をリーダーとする林学研究者の課題だったのでした。

第一、林苑における社殿地と参拝者が移動する参道以外は、一体的で連続する樹林地(植栽地)とする。

第二、樹林地内は人の立ち入りを絶対に禁止する。

第三、神社林は多種の樹種で構成する。政治家からは伊勢神宮のようなスギ林にすべきだと強く要請されたが、林学的な見地から、この土地は水分不足であり、隣接地を走る汽車のばい煙により枯死するためスギは不適である。さらに植栽樹木を自然林へと遷移させるために、広葉樹や針葉樹など多様な樹種を混ぜ、高木層・中木層・低木層と樹高を多層構造にする。

第四、樹林地では落ち葉は積もり、落ち葉は微生物で分解されて腐葉土となる。また倒木にはキノコが生え、腐って土に戻ってゆく。こうして樹林地の外に落ち葉や倒木を持ち出さなければ、樹林に肥料を与えなくとも、その栄養で植物は成長を続けていく。

第五、土中の水分と木漏れ日の光を受け、木の実は発芽し、倒木の後には別の木が育ち、樹林全体としては天然更新が進む。こうして人の手を加えずとも、時間を経て自然林へと遷移していく。

当時は今日のような科学的な言い方はしなかったが、現代風に言えば、“物質の循環”と、昆虫、鳥類、小動物ら“生命の循環”によって、永遠に持続する森林を完成していこうという理論と具体的方法を100年以上も前に構築したのは驚くべきことだ。こうした科学的合理性にもとづくシミュレーション「林苑の創設から最後の林相に至るまで変移(遷移)の順序の予想図」を作成し、植栽直後(I)50年後(II)、100年後(III)、150年後(IV)を見通したことに、ぜひとも注目していただきたいものである。(右の図)

進士 五十八 明治神宮の森:林学者や造園家によるナショナルプロジェクトより

 


ということで、渋沢栄一が設立をリードした明治神宮の森は、具体的な設計をになった同郷の森林学のリーダー「本多静六」によって造成され、次世代の循環社会をリードするプロジェクトとして。今後とも輝いていくのでしょう。

明治神宮のサイト社(もり)のみどころ、
埼玉県菖蒲町本多静六博士顕彰事業実行委員会 日本林学会の巨星ー本多静六の軌跡

junkan10-1<shibusawa-sinrin> 2

■いいねボタン

米国で史上最大の林業の実験ーNature誌news(2021/6/15)

5月21日付けNature誌_newsControversial forestry experiment will be largest-ever in United States(物議を醸す米国史上最大の林業実験)と題する記事が掲載されました。

自然保護と木材生産という永遠の課題に挑む実験計画が長い議論の末に開始

さわりをご紹介します。

ーーー

研究責任者はオレゴン州立大学(OSU)のコーバリスにあるフォレストリー大学の学部長であるThomas DeLuca

オレゴン州南西部に新しく作成されたエリオット州立研究林は、約33,000ヘクタールありますます。

これは40以上のセクションに分割され、科学者は大規模な伐採を含むいくつかの森林管理戦略をテストすることとしています(左の図)。

環境保護論者、ハンター、伐採者、地元の先住民族のメンバーで構成されるプロジェクトの諮問委員会が、4月22日に最新の研究提案を承認しました。

DeLucaによれば、「この計画は、今年後半の国連生物多様性条約の会議の前に、ジョー・バイデン米国大統領と他の国際的指導者が土地と生物多様性を保護するというコミットメントを強化していることに関係しています。」、「今後、エリオットの研究林は、政策立案者がそれらの誓約を定義し、実行するための最良の方法を決定するのに役立つ可能性がある」、のだそうです。

junkan2-4(Exp-US)

■いいねボタン

新に木材利用促進法ー公共建築物木材利用促進法改正案成立(2021/6/15)

今国会に議員立法として提案されていた、公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案が6月11日参議院で可決成立しました。

脱炭素社会の実現に 木材活用と森林整備につなげる法改正(NHKニュース)

法案の内容は以下に掲載されています。
●公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案

新旧対照表

さわりの部分を読んでみました

法律の名称を「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」から「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に変更するとともに、第一条の目的を示す規程を以下のようにするのだそうです。

 (目的)
第一条
この法律は、木材の利用を促進することが地球温暖化の防止、循環型社会の形成、森林の有する国土の保全、水源の涵養その他の多面的機能の発揮及び山村その他の地域の経済の活性化に貢献すること等に鑑み、建築物における木材の利用を促進するため、農林水産大臣及び国土交通大臣が策定する(以下挿入)木材の利用の促進に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにし、並びに建築物における木材の利用の促進に関する基本方針等について定めるとともに、公共建築物の整備の用に供する木材(以下挿入)の策定、建築物における木材の利用の促進及び建築用木材の適切(以下挿入)かつ安定的な供給の確保に関する措置を講ずること等(以下挿入) 等について定めるとともに、木材利用促進本部を設置することにより、木材の適切な供給及び利用の確保を通じた林業(以下挿入) 及び木材産業の持続的かつ健全な発展を図り、もって森林の適正な整備及び木材の自給率の向上に寄与する(以下挿入) とともに、脱炭素社会(地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)第二条の二に規定する脱炭素社会をいう。第三条第一項において同じ。)の実現に資することを目的とする。

新設された第3条「基本理念」は以下の通りです

 (基本理念)

第三条 木材の利用の促進は、地球温暖化を防止することが人類共通の課題であり、そのための脱炭素社会の実現が我が国の緊要な課題となっていることに鑑み、森林における造林、保育及び伐採、木材の製造、建築物等における木材の利用並びに森林における伐採後の造林という循環が安定的かつ持続的に行われることにより、森林による二酸化炭素の吸収作用の保全及び強化が十分に図られることを旨として行われなければならない。

2 木材の利用の促進は、製造過程における多量の二酸化炭素の排出等による環境への負荷の程度が高い資材又は化石資源(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭をいう。以下同じ。)に代替して、森林から再生産することが可能である木材を利用することにより、二酸化炭素の排出の抑制その他の環境への負荷の低減が図られることを旨として行われなければならない。

3 木材の利用の促進は、森林の有する国土の保全、水源の涵養その他の多面的機能が持続的に発揮されるとともに、林業及び木材産業の持続的かつ健全な発展を通じて山村その他の地域の経済の活性化に資することを旨として行われなければならない。

省庁にまたがる「木材利用促進本部」がどんなことをするのか、温暖化対策法と連携した脱炭素社会の実現がどんな道筋にすすんでいくのか、今後の課題がたくさんありそうですが、改正に取り組んだ方々の熱意が伝わってくる条文ですね。。

以下の概要です

公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(衆第三〇号)(衆議院提出)要旨
 本法律案は、脱炭素社会の実現に向けて、建築物等における木材の利用の一層の促進を図るための措置を講じようとするものであり、その主な内容は次のとおりである。

Ⅰ、題名及び総則の改正
1 題名を「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に改め、目的に脱炭素社会の実現に資することを追加するとともに、基本理念を新設することとする。
2 責務規定等を改正し、国は、建築用木材等の適切かつ安定的な供給の確保のために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととするとともに、林業及び木材産業の事業者は、1の基本理念にのっとり、建築用木材等の適切かつ安定的な供給に努めるものとする。
3 国民の間に広く木材の利用の促進についての関心と理解を深めるため、木材利用促進の日(十月八日)及び木材利用促進月間(十月一日から同月三十一日まで)を設けることとする。

Ⅱ、建築物における木材の利用の促進に関する施策の拡充等
1 基本方針、都道府県方針及び市町村方針の対象を公共建築物から建築物一般に拡大することとする。
2 国又は地方公共団体及び事業者等(事業者又は事業者団体をいう。以下同じ。)は、事業者等による建築物における木材の利用の促進に関する構想及び国又は地方公共団体による当該構想の達成に資するための支援に関する事項を定めた協定を締結することができることとする。
3 国は、2の協定に係る構想の達成のための事業者等の取組を促進するため、必要な支援を行うものとし、地方公共団体は、国の措置に準じて、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

Ⅲ、木材利用促進本部の設置
農林水産省に、特別の機関として、木材利用促進本部を置くこととし、同本部は、基本方針の策定、木材の利用の促進に関する施策の実施の推進等に関する事務をつかさどることとする。

Ⅳ、施行期日
この法律は、令和三年十月一日から施行することとする

(G7サミットでの中の木材利用)

丁度、採択された11日、菅総理はG7サミットに出席するために英国南部コーンウォールに渡航。

G7のテーマの一つが気候変動だし、G7の国のなかで、多分木材利用に関してついてこんな法律を持っている国はないはずだから、菅総理の口からこの新法律のことが紹介されるかな?

と思ってフォローしてみました。G7では森林にも関するNatureContact自然協約、という共同声明が採択されました。少し勉強して内容を紹介します、が日本の法律については触れられていませんネ。

kokunai11-12<riyouhou_sin>

■いいねボタン

「持続可能な木材需要と違法伐採対策における合法性確認アプローチ」(2021/6/15)

日本の木材利用のサプライチェーンによる違法伐採問題対策という課題:私自身が結構出だしから深くかかわってきたので、勉強部屋でも結構詳しくフォローしてきました

この問題について、そろそろクリーンウッド法成立から5年がたち、どうなるんだろう、と、当事者でないのですが、気になっていました。

そのようなタイミングで、日本木材総合情報センターが毎月出版している木材情報誌5月号に、標記記事が掲載されていましたので、読んでみました。

学術論文などを引用して、最近の違法伐採問題をとりまくグローバルな情報をまとめてくれているので、勉強になりました。

概要を紹介します

標題:持続可能な木材需要と違法伐採対策における合法性確認アプローチ

執筆者:山ノ下麻木乃(公益財団法人地球環境戦略研究機関IGES)/粟生木干佳(同)/藤崎泰治(同)/鮫島弘光(同)

概要:

1 はじめに
違法伐採問題に取り組む原動力が、昔指摘されていたLawson & MacFaul (2010) Chatham Houseworld Bank(2006)林業分野の持続可能性や市場への悪影響だけでなく、地球環境問題を背景として拡大しているのでないか(という問題意識)。

2. 持続可能な木材に対するニーズの高まり
2.1 気候危機
IPCC(2018)1.5℃特別報告書が指摘するように、その道筋で2030年までの森林減少源が求められているが、世界中の森林減少の排出量は日本の排出量の2倍以上など具体的な数値が明らかになっている(WRI2021)。森林減少の主原因が商品作物生産拡大であることが分かってきた(Goldman等(2020))ので、市場の木材の循環性が問われる。多くの一般企業がゼロデフォレステーションを気にし始めている(SBTイニシアティブコミット1000社以上など)
2.2資源をめぐる緊張(循環経済への移行)
気候変動の要因の50%、土地に関わる生物多様性喪失および水への負のストレスの90%が天然資源の採掘とその加工プロセスによるといわれている(IRP、2019)。サーキュラーエコノミーへの移行が提案されているが、ますます、木材のトレーサビリティが大切に。

3 木材の持続可能性確保のための合法性確認
3.1 違法伐採対策の動向
日本のクリーンウッド法と各国の動きを(韓国も含む)を比較
3.2 木材の持続可能性と合法性確認
合法性は持続可能性の一側面に過ぎないので、合法性の取組をネガティブにとらえる主張(Leipld等2016)もあるが、持続可能性を評価するプロセスの大切な第一歩。

4 終わりに
「デューデリジェンスを活用した合法性確認アプローチを、森林減少や劣化に関連している農業製品の輸入規制に適用しようとする動きもあり、国際的にこのアプローチが主流化していく可能性が高い。日本においても、クリーンウッド法の確実な運用を含め、違法伐採対策と木材やその他の製品の持続可能性確保に関する取組がさらに求められる。」

クリーンウッド法の次のステップ、大切な時期です。

筆者と日本木材情報センターに了解をえましたので、内容を以下に置いておきます
持続可能性に配慮した木材に対するニーズと違法伐採対策における合法性確認アプローチ

bouki4-75<IGESREP>

■いいねボタン
次世代の森林の行方・カーボンニュートラルは?ー新森林林業基本計画を読む<1>(2021/6/15)

昨年来検討されてきた「新たな森林・林業基本計画」が6月15日に閣議決定されます。

勉強部屋でもパブコメ版に意見を提出するなど、関心をもってフォローしてきました。

色々提案をしましたが、3つのテーマでした。

(課題1)令和の国産材時代の次の世代の山づくりは大丈夫?ー森林のガバナンスはユーザーと連携で
 (課題2)カーボンニュートラルにむけて森林と木材の政策が具体化しいますか?ー特に木材利用とCNの関係は大切
(課題3)前計画の「林業成長産業化」と、グリーン成長・新しい林業の関係は?

パブコメ全体についての考え方については、6月4日付林政審の提出資料として林野庁のページに掲載されています。資料1 「森林・林業基本計画(案)」及び「全国森林計画(変更案)」に対する意見の概要

新計画が確定したので、その内容にそって、上記のパブコメ意見との関係で、その内容を見ていきます。

(まだ出たばかりなので、二か月がかりで)

左の図は、前計画と新計画の目次の比較表です。

基本計画は、まえがき 、第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針 、第2 森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標 、第3 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策 、第4 森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 というセッションにわかれていて、新計画もそれを引き継いでいます(緑のセル)

そして、茶色の部分が、総括的な記述や、新しい章立てになった部分とかで、前述の提案がどのようになっているか検討するのに大切な部分です。

順番に検討し行きますね。

少々お待ち下さい。

第1回持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー

タイトル:新なた森林・林業基本計画と国内森林政策の課題ー基本計画の作成過程からみえてきたもの

ゲスト:林政審議会土屋俊幸会長

日時:7月24日(土曜日)14時から

5年に一度の大切なイベントなので、少し勉強した結果を皆さんと共有しようと、これを題材としたZOONセミナーを開催することとしました。

ゲストに林政審土屋俊幸会長を迎えて「タイトル:新なた森林・林業基本計画と国内森林政策の課題ー基本計画の作成過程からみえてきたも」!!

以下に案内をしていますのでご関心のある方はぜひぞうぞ。

持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第1回御案内(2021/6/15)

kokunai1-22<kihonkeikaku2021_4>

■いいねボタン
 持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第1回御案内(2021/6/15) 

持続可能な森林フォーラムでは、皆さんとのコミュニケーションを双方向で深めていくため、ゲストをむかえて、Zoomセミナーを開催する計画です。

とりあえず、第1回目は「新たな森林・林業基本計画」が作成されたタイミングで、ゲストに、林政審会長をつとめた、土屋俊幸東京農工大学名誉教授をむかえ、作成過程のいきさつと改訂のポイントを話していただきます。

そして、勉強部屋からも意見を出した、令和の国産材時代の次の世代の森づくり、森林のガバナンスの強化に対する建築関係者などユーザーとの関係など、議論をしたいと思います。

どうぞ皆さん、ご参加下さい。

参加はこちらからどうぞ→(Zoomセミナー第一回参加申し込み窓口

(正会員・賛助会員以外の方は入場料をいただきます)

 konosaito3-1<zoommt1st>

■いいねボタン
消費者と森林ガバナンスをつなぐツール森林認証ー勉強部屋ニュース262編集ばなし(2021/6/15)

新たな森林・林業基本計画の決定や、会期末に木材利用に関する法律がきまったりと、勉強部屋ニュースを発出する締め切り近くに、大きなトピックスがありましたが、フロントページは森林認証制度について。本文にも書きましたがSGECとFSCという日本の二つの消費者と森林をつなぐ仕組みの年次会合が同じ日の午前午後とおこわれたので、両方出席して、双方の方と意見交換。少し未整理ですが、両方の会議に出席するということの意味を自分なりに考えながら、ちょうどこのサイトを始めたことに海外からやってきた森林認証制度との付き合いの大切さをもう一度かみしめています。

基本計画については閣議決定されたばかりなので、もう少し勉強をしてみますが、重要な森林ガバナンスのカギは(いろいろあると思いますが)消費者、建築関係者との連携だ!という趣旨でパブコメも提出しました。この話は森林認証制度にもつながります。

そして、ウッドマイルズフォーラムの建築関係者との連携の話につながります。ウッドマイルズフォーラムで新たな森林・林業基本計画の話をする準備をしています。

ところでもう一つ、このサイトの作成主体である「持続可能な森林フォーラム」の総会を19日に実施します。ほとんど一人でやりくりしていたこのサイトですが、もう少し範囲を広げてしっかりした内容にしていくために、皆さんとご相談していきたいです。もしもご関心のある方は、こちらから入会下さい。

次号以降の予告、G7サミットの自然協約と森林の未来、次世代の森林の行方・カーボンニュートラルは?ー新森林林業基本計画を読む<本論>、バイオマス熱利用の普及拡大への道筋、ウッドショックから見えるもの、地域の未来自伐型林業で定住化、地球温暖化対策の推進に関する法律改正は?地域的な包括的経済連携(RCEP)協定と森林・木材ーTPP/EPAとの比較、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法改正ー2050年カーボンニュートラルの実現にむけた法律改正、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容、林業と木材利用の気候変動対策の潜在的可能性

konosaito<hensyukouki>

■いいねボタン


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com