懐疑論の元になった報告書?EUにおけるエネルギ―生産のための木質バイオマス利用(2022/8/15)

7月30日勉強部屋Zoomセミナー第1回を、ゲストに、元林野庁長官、(一社)日本木質バイオマスエネルギー協会JWBA顧問加藤鐡夫氏をむかえて開催。「木質バイオマスのカーボンニュートラルに関する問題」につい意見交換をしました。

その過程で私の方でも、欧州の報告書の内容を紹介してほしい、というリクエストがあり、すこし勉強してプレゼンしました。

タイトルは「EUにおける木質バイオマスを利用したエネルギー生産(Joint Research Center (JRC)、EU共同研究センターの報告)について」

バイオマスエネルギー問題は「やっかいな問題」と言われていますが、この言葉を初めて使った文献。

ご紹介しますね

この報告書は懐疑論の発信源なのかな?

日経新聞2021年12月28日「バイオ燃料、原料調達に懸念 排出減巡り異論も」欧州連合(EU)の欧州委員会の委託を受けた合同調査センター(JRC)が今年に入って公表したリポートはエネルギー業界に衝撃を与えた・・・
白井裕子:環境への悪影響を孕むバイオマスの「大型発電」(2022年5月)欧州委員会のJRC報告書では、バイオマスエネルギーをカーボンニュートラルとみなすのは正しくないと示唆している
・・・the governance of bioenergy sustainability can thus safely be dubbed ‘a wicked problem’.
(・・・このように)バイオマスエネルギーの持続可能性の確保は、「やっかいな問題」といって差支えないだろう。

我々(科学者)は、政策選択枝の誠実な仲介者として、問題や可能な解決策を示す証拠を収集し統合することはできるが、「正しい」政策手段や従うべき「正しい」政策原則を特定することはできない。なぜなら、これらの問題は政治分野の領域。(皆さん、この報告書を読んでしっかり判断してくださいね・・・)
縦軸は、Carbon Emissions Mitigation(炭素の排出と緩和(回収))(上が短期に回収される良い例、下が回収が長期間にわたる悪い例)
横軸は、Biodiversity & Ecosystems' Condisitons Assessment(生物多様性と生態系条件の評価)(左が生態系管理に貢献する良い例、右が生態系を悪化させる悪い例)
そこにバイオマスエネルギーを供給(を強化)する24通り施策を配置してみました。
縦軸の回収期間て何?

左の図は森林を伐採した場合、右の図は伐採跡地の残渣を回収する場合

右の図で説明しますね
伐採跡地の残渣を回収して燃焼させてエネルギー利用(化石資源の燃焼を節約)した場合の大気中のCO2の量(a)、
伐採残渣を森林内に置き(長時間で腐朽させる)化石資源を利用してエネルギー利用した時(b)と比較すると?
残渣が放置された場合の腐朽のスピードによって評価が違う
これが回収期間です
24の施策ってどんなもの?

●が伐採地に残る残渣を回収する方法(9通り)
が植林(11通り)
が人工林への転換(4通り)
合計24通り
  さて、●の9通りってどんな場合を想定しているの?

広い集めるのが、①林地に置かれている大きな木片なのか、②小さな木片なのか、③切り株なのかの3通り
そして、それぞれを、①景観を超える規模で大規模(above landscape threshold)に収集除去するのか、②それほど大規模にしないのか(below landscape threshold)
植林の11通りってどんな場合を想定しているの?

植林の対象地が、①自然の草地、②人為的ヒースランド(大昔森林だったが、人為的に農耕牧畜によって森林にならずにヒースがはえる土地になった)、③先行農用地、の3通り
植林の方法が、①一樹種、②複数の樹種、③他の人工林と連携した樹種、③天然林の誘導、4通り
人工林への転換(4通り)はどんな場合を想定しているの?

対象が①原生林か、②天然再生林なのかの二通り
樹種による3通り
バイオマス燃料をつかってエネルギーを生産をすると、燃料の集め方によって、生物多様性に悪影響をもたらす。(自然の草地を植林した場合など)

バイオマス燃料をつかってエネルギーを生産しても、同じエネルギーを化石資源で生産した時に比べて、大気中の二酸化炭素が、長い間へらない。(森林内にあって長い間腐朽しない「大きな伐採残材」を集めて燃やした場合など)
まとめ(報告書の内容と示唆されること)
(欧州で)考えうる選択肢を示して効果がどうかを検討しているもので、「カーボンニュートラルになるのは5/24しかない」という議論にならないように注意が必要
バイオマスエネルギーを利用を推進して、化石資源の燃料を代替することは大切な事業だが、以下の二つのリスクを慎重に検討して、バイオマスの供給方法を探る必要がある。
①供給過程で生物多様性など環境への配慮ができているか(持続可能な供給体制)?②バイオマスを化石資源に代替して燃焼させたときに、その瞬間には化石資源燃焼よりたくさんのCO2が放出されるが、最終的には増加分は回収される。バイオマス供給形態で回収速度が違うので・・・、CO2が回収されるタイミングが早くならないか?
可能な選択肢を機械的に取り出し選択肢を示して検討しているので、具体的な可能性を欧州でない日本の現場の条件も踏まえて柔軟に検討していこう

(参考情報源)

元の文献は、ネット上のこちらにありますJRC Science for Policy Report- The use of woody biomass for energy production in the EU

相川 高信 自然エネルギー財団 上級研究員 「やっかいな問題」として森林バイオエネルギー問題を捉える-JRCレポートを読み解く

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