5月30日に一社)国産材を活用し日本の森林を守る協議会(国活協)という団体が主催する、キックオフ・フォーラム『みんなでつくる持続可能な森林と社会』というイベントが新木場の木材会館で開催されたので参加してきました。
国活協という団体は、林業関係者なら知っている方が多い林業協会、全木連、全森連、全素協、林経協、全市連という森林・林業・木材産業関係6団体が、「広く国産材の活用を訴え需要を拡大することで森林再生に新たな一歩を踏み出す」ことを目的に2017年に出来た団体です。森林木材関係の主要な全国団体の集まり、メーンストリームの団体ですね。
その団体が、持続可能な森林と社会を目指して、イベントをする。すごいことだ・・・ーー。
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プログラムは、の左図の通りですが、最後の共同宣言をまず、紹介しますね。
タイトルは「みんなで支える持続可能な森林づくりへ向けて<共同宣言2025>」
(『森林・林業・木材産業関係団体による共同宣言』)
共同宣言の内容はネット上に掲載されていますが、少し詳しく見て行きましょう
本分 |
勉強部屋のコメント |
みんなで支える持続可能な森林づくりへ向けて<共同宣言2025> |
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森林・林業・木材産業関係7団体は、令和4年6月1日に「時代の要請に応える国産材の安定供給体制の構築に向けて」(共同行動宣言2022)の理念に基づき、率先して行動してきました。この間、地球環境問題を背景に世界的に持続的森林経営への関心が一層高まり、木材利用において持続性の担保された森林から生産された木材の利用が当然のこととして求められる状況が生まれてきています。 |
過去の経緯と背景説明
持続可能性が担保された木材の利用が求められている |
しかしながら、我が国においては立木価格の低迷から森林所有者の林業経営意欲は低下し、伐られた後植えられず荒廃する林地が大きな問題となりつつあり、地球環境問題において世界をリードすべき立場にある先進国日本におけるこのような森林管理の状況は国際的にも国内的にもますます許されないものとなってきています。 |
課題認識
伐採跡地が荒廃し国際的にも問題視
グローバルな視野にたった共同宣言 |
このような現状の下、世界に誇る日本の森林を将来にわたり健全な状態で維持していくためには、森林所有者から生産流通を担う林業・木材産業関係者、さらに環境に優しい木材の活用に取り組む需要者が力を合わせて、『持続性の担保された木材しか使わない社会』の実現を図っていくことが必要となっています。 |
共同宣言の方向性
「持続性が担保された木材(STW)しか使わない社会実現」 |
こうしたことの実現に向けたわたしたちの活動の趣旨をできるだけ多くのみなさんにご理解いただき、ともに持続性の担保された木材の活用に向けた運動に参加・協力くださる方々を募り、大きな力を集めて以下の取り組みを進めることを宣言します。
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行動宣言本体 |
1 わたしたちは、森林所有者の皆さんに対して、森林の有する様々な機能を健全に維持するために持続的な経営の重要性の理解を促すとともに、持続性の担保された木材に対する需要の拡大に努め、伐採から再造林、保育を経て成林に至る持続的な森林経営を進める森林所有者を支えていく環境の構築に取り組む。 |
持続性が担保された木材の需要をすすめ、森林所有者を支える |
2 わたしたちは、林業・木材産業関係者に対して、安全で効率的な素材生産体制の確保とともにサプライチェーンマネジメント等効率的な流通の仕組みづくりにさらに取り組むことにより国産材の市場競争力を高めるとともに、需要者が持続性の担保された木材を安定的に入手することを可能とするための取り組みを働きかける。 |
持続性が担保された木材を需要者が安定入手できる取組すすめる |
3 わたしたちは、木材を利用する国民及び需要者に対して、持続的な経営の行われている森林から伐採搬出される木材を利用することの価値を理解していただくための働きかけを引き続き行うとともに、国民及び需要者に信頼される持続性の担保された木材の活用に取り組むよう働きかける。 |
需要者に持続性が担保された木材の活用を働きかける |
4 わたしたちは、日本において持続的な森林経営を確立していくことは国際的な責務となってきていることを重く受け止め、国の方針として持続性の担保された木材を活用していくことを明確にすることを求めていくとともに、民間レベルにおいて『持続性の担保された木材しか使わない』という行動の輪を広げる運動に取り組み、国民意識の喚起・普及に努める。 |
国の方針として持続性が担保された木材を進め、国民意識をためめる |
以上の通りです。
(前回の共同声明2022と比べると)
同団体の3年前の共同声明のタイトルは「時代の要請に応える国産材の安定供給体制の構築に向けて(共同行動宜言2022)」です。、
ウッドショックの直後だったこともあり、「山側による原木の増産、再造林の実行体制の確保とともに、それを支える国産材製品への需要側の取組が必要であり、このためにはお互いが強い信頼関係の下、供給者と需要者が一体となった取組を構築していくことが求められている」として、国産材の供給体制を安定化させようという、方向性が強く出ていました。
(勿論、持続性が確認された国産材原木が必要!!というメッセージもあり、「持続的な森林経営と、国産材の安定供給との両立を図るため、」となっています
それに対して、今回の共同宣言のタイトルが 「みんなで支える持続可能な森林づくりへ向けて<共同宣言2025> 」となっているように、持続可能な森林へのシフトが進んでいます。
(共同宣言のまとめ)
以上のとおり、①国内の森林ガバナンスの問題点を意識して、②グローバルな視野にたって、③持続性の担保された木材しか使わない国民運動の先頭に建とう
すばらしい共同宣言ですね
次のような課題があるように思いますが、頑張ってください。応援します。
課題1合法性が確認された木材しか視野にはいっていない、またサプライチェーンのシステムが不明確なクリーンウッド法をどうしていくのでしょうか?
課題2:共同宣言の中にエンドユーザーであるゼネコンとか建築関係者が(まだ)入っていませんが、どのように連携を図っていくのでしょうか?
全国団体の会長が署名した共同宣言です。私たちのすぐ隣にいる傘下の企業がこんな方向で積極的に経営しているか?
結構ハードルが高いかも知れませんが、しっかりフォローし、応援してまいりましょう。
(基調報告登壇者のメッセージ)
さて、プログラムの他の内容ですが
基調講演登壇者は小坂善太郎・林野庁次長、隅修三・東京海上日動火災保険(株)相談役(ウッド・チェンジ協議会会長)、立花敏・京都大学教授の3人
その後のサミットトークは、3人の他に、吉川重幹( 一社) 日本林業経営者協会会長、堀尾牧子SGEC/PEFCジャパンマーケティング&プロモーション部長 の二人が加わりました。
基調報告は以下の通りです
名まえ |
タイトル |
配布資料 |
コメント |
小坂善太郎
林野庁次長 |
森林木材の持続的
循環利用に向けて |
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林野庁の関院者が語る循環型社会に向けた政策の包括的説明。
林野庁が所管する川上分野だけでなく、
建築物の木材利用に係る評価ガイダンス、木材利用の効果の「見える化」か「価値化」など、
別途説明ページ作ります |
隅修三
東京海上日動火災保険(株)
相談役
(ウッド・チェンジ協議会会長) |
地方創生と
森林林業の役割 |
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森林循環を回すエンジンは木を「使う」こと
民間ビル・マンションは木造化の余地が大きい
丸の内に建設中の本社ビル2028年完成
長期にわたる安定した大きな需要が見えて来れば、投資の予見可能性が高まり、林業の上流から下流の整備に民間の投資が生まれる |
立花敏
京都大学教授 |
森林育成コストの
適正評価を考える |
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••国内の木材価格の関係はどうなっているのだろうか?
•国内の丸太価格の水準は国際的に見てどうなっているか?
・日本の育林費用は国際的に見てどうなっているのだろうか?
・持続的な林業経営に向けて何が必要と考えられるだろうか?
ー
具体的な学術データに基づくい育林過程の低コスト化提言 |
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(持続可能な木材立木市場)
もう一つ会場で配布された大切な資料が、持続可能な木材立木市場の可能性
勉強部屋でも紹介した、復活のチャンスを迎える日本林業ーカギは国民理内の元での適正な立木価格の形成のわかり易い解説書です)
kokunai6-73<KOSusMS>
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