いま、求められる木の建築・活動とはー木の建築賞2019の審査結果(2020/5/15)

15回を迎える木の建築賞の審査結果が公表されました。私自身が審査委員を務める大切なイベント。

木をつかった建築物の表彰は木材利用優良施設コンクール(主催木材利用推進中央協議会)、ウッドデザイン賞(主催運営事務局、林野庁補助事業)など広がっています。総理大臣賞、いろいろな大臣賞・・・素晴らしいことですが、これらは木材業界や林野庁などがどちらかちうと川上が主導するコンクールです。

これに対して木に建築賞は、木の建築フォーラム(「自然環境との共生を図りつつ、質の高い生活文化の再構築を目指」(設立趣意書)という川下の問題意識が主導した建築賞です。

発表の結果は以下のとおり。もう少し詳しい情報は関係サイト掲載しています。詳細はそちらにお任せして、私が現地審査に行ったところを中心に紹介。

 
◆木の建築大賞
茂木町まちなか文化交流館 ふみの森もてぎ/内田文雄(株式会社龍環境計画)

栃木県茂木町。歴史的な町並みの中心部に残る洒造蔵を展示集会施設に転用し、図書館を附設した地域の文化複合施設。、町布林を伐採して得られた中径木をいかし、12x24cmのスギ材でできる構造として、アーチとカテナリーの糾み合わせによる構造を開発し、16mの大きなスパンを架け渡している。

町有林の木材を使うためにあらかじめこから得られる木材の径級を確認して構造設計に反映し、碁本設計終後に必要な木材を算出、調達した。
◆選考委員特別賞・メンバーズチョイス賞
東急池上線旗の台駅/鈴木靖(株式会社アトリエユニゾン)
◆選考委員特別賞
堯舜国際初等部/中村勉(株式会社中村勉総合計画事務所
浦和明の星女子中学・高等学校カフェテリア棟/加地則之(清水建設株式会社)
◆木の活動賞
天竜杉大径木活用プロジェクト/石牧真志(有限会社石牧建築)

人工林の高齢化にともない出材する木材の径級が大型化している国産材のよさを、どう活かすか?他の地域より10年ほど進んだ高齢林をかかえる浜松市天竜林業地の木材を、製材過程で丸太の芯を中心にした木取りでなく、芯去り割り角の横架材をつくれば化粧材にもなる。こういう地元工務店の提案が出発点のとなったのが、天竜大径木活用プロジェクトである。

建築関係者が山の事情を考えにいれて、川上の製材事業者とコミュニケーションをとって地域の木材の流れを少し変える、「木の建築賞(木の活動賞)」に相応しい、全国の課題を先取りした活動だ。製材業が大型化・効率化しグローバルマーケットに立ち向かう「大きな林業」と、地域の森林の事情に応じた地域の知恵を出し合って立ち向かう「小さな林業」が注目される。このプロジェクトは「小さな林業」の好例だ。

その他に、この工務店の建設資材は、ほぼ100パーセントが上流域の森林由来のFSC認証木材、それも天然乾燥材なので、循環木材の利用と⽊材の⽣産流通過程のGHG排出量という地球環境問題からの切り⼝でも他の類をみないだろう。
そんな切り口も訴求材料にして、今後、木の活動が、さらに厚みをまし、地域の他の関係者を取り込んだ広がりになっていくことを期待する。(藤原の講評)
◆木の建築賞(ムクファースト崇秀記念賞)
梅郷礼拝堂/加藤詞史(株式会社加藤建築設計事務所)
◆木の建築賞(キノチカラ建築賞)
わらしべの里共同保育所/古川泰司(アトリエフルカワ一級建築士事務所)

樹種の違いを体で確かめる(保育園のわらしべ会理事長長谷川さんのお話)

新しい園舎での保育が始まって子どもたちは、最初の1日か2日は誰も中にはいろうとしませんでした(笑)。前の園舎の床はヒノキでこちらはスギ。スギの扱い方が感覚的にわからなかったんだと思います。なので、外で過ごしていましたが、3日目になってようやくちょろちょろ出入りだしました。子どもってこんなに感性豊かで、木の性質まで見抜くのかと恐れ入りました。

殆ど全員が片足をヒノキに、もう片方はスギに置き、たったまま動かない・・・違いを確かめているんですよ・・・。

面白かったです
◆木の建築賞(モリノチカラ建築賞)
Shell House/The language of forest/遠野未来(遠野未来建築事務所)
◆木の建築賞(木の住宅賞)
山泰荘/日影良孝(日影良孝建築アトリエ)
◆木の建築賞<2作品>
・柳小路 南角/三井嶺(三井嶺建築設計事務所)
・面白法人カヤック様社屋新築工事/谷尻誠(SUPPOSE DESIGN OFFICE)

今年は東北地方のようです。

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