WTOの特別報告の視点から米国の報告を評価してみると(1999/11/24)
1 趣旨

USTRと環境委員会が発表した表記報告書について、WTOが10月に発表した「貿易と環境に関する特別報告書」(別紙抄訳)の立場(=国際貿易交渉の常識的立場)に立って問題点を指摘。

2 米国の報告書の概要

手法  :@二つの貿易モデルを使って、関税撤廃とそうでない場合の林産物の製品別生産量・貿易量と収穫量を地域ごとにシナリオ分析。A環境への影響については収穫量を代理変数と想定。

分析結果:@環境については、米国については環境の影響皆無。世界的にも影響微少。A経済については、貿易の高次加工製品へのシフト、途上国の経済成長を促し環境に好ましい影響。B我が国に関しては、収穫量が関税撤廃によって5.8%ダウン。

3 基本的な手法についての問題点

収穫量が多くなると自動的に環境へのインパクトがあるとの仮定に無理がある。
WTO報告書が指摘するように
「汚染者負担の原則により環境コストが内部化され、税や規制により汚染源において直接市場の失敗が是正された上、政策の失敗が回避された場合(前提1)、貿易自由化は明白に便益を向上させる。しかし、貿易の自由化は不適切な環境政策の結果を助長する働きがある。例えば森林の管理が不適切な場合、国際マーケットの需要が持続可能でない木材生産を助長する」
これを、今回の文脈で言えば、前提1を「持続可能な森林経営が実現している場合」、と読めば「持続可能な森林経営が実現している場合、自由化はメリットがあるが、そうでない場合、持続可能でない木材生産を促し、環境を破壊する(ローカルな問題だけでなく、安い木材が国際市場に流出し地球環境の問題となる)。」 あくまで、木材生産は持続可能なものかどうかが問題であり、木材生産一般を環境破壊の指標とするのは誤り。
4 途上国の経済成長と環境

途上国の経済成長に従って環境投資が増大し環境が良くなる、いわゆる環境クズネック曲線の仮説については、WTO報告書で指摘するように、ローカルな環境問題については、仮説を支持するケースは多いが、地球環境問題には仮説を棄却する例が多い。森林問題は地球環境問題。

5 我が国の環境インパクト

我が国の収穫量が減少することは、(我が国の森林が持続可能な状況にあるかどうかという判断にもよるが)、3の前提から言うと、マイナスの効果。(WTO報告書では充分な展開がされていない部分ではあるが)

6 結論

ATLには問題が多い。WTO報告も指摘するように、「地球環境問題を解決するには、国際的な枠組みが必要。また、貿易的手段は国際的な枠組みへのインセンティブとなりうる。」こういう枠組み交渉を優先させるべきである。持続可能な森林経営への国際的な枠組みが十分見えない現段階の中で、環境破壊を「助長する」(WTO)自由化を進めるのは問題。