「厄介な問題」を正面から―木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論について(2022/6/15)

「NGOの発出する森林由来のバイオマスに関するネガティブなな情報発信がステップアップしている」としてこのサイトでも心配してきましたが(木質バイオマスエネルギーは厄介な問題を抱えている!?ー課題と期待(2022/4/26))、木質バイオマスエネルギー協会JWBAのサイトに、木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論について」(JWBA加藤鐡夫副会長)(以下「懐疑論について」といいます)という意見が掲載されました。

私も、作成過程に若干かかわりました。 懐疑論をしっかり議論ていく場合(厄介な問題を単純化するための)の重要な論点が提示されています。関心のある方はどうぞ。

私も読んでみました。幾つかの論点の中で、一番重要だと思ったのは、議論の「時間軸」だと思います。関連して補足意見を述べます。

((石炭より悪い輸入木質バイオマス))

「懐疑論について」の冒頭は「最近、木質バイオマスエネルギー利用のGHG削減効果について問われる機会が多くなっています。その中でティモシー・D・サーチンジャー氏(プリンストン大学)が「グローバルネット」誌で公表された文章(2022年3月)のタイトルが「石炭より悪い輸入木質バイオマス」とされていることに驚かされました・・・」で始まります。

これも読んでみました(以下サ―チェンジャー記事といいます)。(上記ページに、「6月以降本文が掲載される」とされていますが、15日現在まだですが、サ―チェンジャー記事是非お読みください)

章題にそってサ―チェンジャー記事の議論を整理してみますね
@化石燃料より多いCO2の排出量(生産(樹木伐採)、加工(ペレット化)、燃焼の三つの段階でを合わせると、化石燃料の約3倍のCO2を排出する)
A伐採による増える「炭素負債」(伐採後再生されればCO2は吸収されるが、時間がかかり大気のCO2濃度は(化石資源を燃焼した時より)高まり温暖化は加速、時間がない)
B森林の拡大は伐採を正当化しない(国や州の単位で森林が増えていればいいだろうという考えもまちがっている。森林を伐採しなければ、もっと増える)
CIPCCガイドラインの誤った解釈(IPCC国別報告ではエネルギーセクターで化石燃料のCO2だけカウントすることになっているので木質バイオマスのCO2は無視してよいと誤解されているが、伐採した木材はエネルギーセクターでなく「土地利用の変化」でカウントされている)
→以上により
D日本政府に求めること(木を燃やすことに対して助成金を出さないこと。正しいLCAにより木の燃焼がGHGの排出を増やすという結論が得られれば、事業者は燃やすことをやめるはず)

(サ―チェンジャー記事の議論に対応した「懐疑論について」の議論)

さて、それでは、「懐疑論について」、の内容はどうなっているでしょうか?

結論部分は私自身は、その意味で木質バイオマスエネルギー利用の推進は欠かせないと思っています、なんで、結論部分は正反対ですね。

それに至る過程で、@ABを議論しています(Cはふれていないので、多分賛成なんでしょう)

@Aについて「時間軸」という視点での批判が重要な論点だと思います(Bについての「懐疑論について」の議論は、サ―チェンジャー記事の議論をしっかり批判できてないかな)

(なんで、気候変動問題が起きたのかー基本が忘れられる2050年問題のリスク)

@もAも正しいが、だからといってDにはならない。その視点で「懐疑論について」が指摘するのは「時間軸」です。見ていきましょう。

「気候変動問題の原因は、産業革命以来の億年以上前に地下深く貯蔵された炭素を掘り起こし、その結果が大気のCO2濃度を上昇させているということ。産業革命以前の人間活動は、基本的には地上部の資源(地下を含むとしても数m以内程度)を利用して行われてきた。」

「石炭より悪い輸入木質バイオマス」という形で、どのように循環社会を構築していくのか、という基本論が忘れられようとしている一因は、「2050年においてCO2排出量を実質ゼロにしようとしていること」 

2050年問題が大きな課題になり、どうやって達成するか大変困難な議論をしていくと、2050年問題は「緊急避難問題」(問題の本質は別にして、なんとか達成しないと大問題になるから回避手段を!)という議論になります。。

とりあえずなんとしてでも2050年問題をクリアするには、木質バイオマスより石炭を燃やした方が確実、なんでしょう。
時間軸をわすれると、こんな議論に巻き込まれます。

「化石資源を社会を循環社会にできるだけ早く転換を」これが重要な視点です。

(サーチェンジャー記事の大切な視点)

サ―チェンジャー記事のタイトルなどが、問題点を厄介な問題に誘導する可能性があるので注意!ということですね。

サ―チェンジャー記事のそれぞれの章には、ライフサイクル分析の重要性、どのように回復させるのか、輸入材と国産材でリスクがどう違うのか、などにつながる、いままで、十分い議論されていなかった議論がのっています。しっかり議論していかなければなりません。厄介な問題ではなく

二つの文章をもう一度よんで見てくださいね

ティモシー・D・サーチンジャー氏(プリンストン大学)が「グローバルネット」誌で公表された文章(2022年3月)

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