グリーンインフラと森林ーグリーンインフラ運動の進展(2020/7/15)

国交省がWeb上で6月下旬から7月上旬に開催した「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム 第1回シンポジウム」に参加しました(見ました)。

Web上のシンポジウムの可能性は?グリーンインフラとは一体何か?・・

「自然の持つ多機能性やしなやかな回復能力などの特性を賢く活用するインフラ整備・国土の管理手法の新しい概念」をグリーンインフラ(以下GIと言います)というんだそうです。(グリーンインフラ研究会グリーンインフラとは

国交省は2018年12月GI懇談会設立、19年7月GI推進戦略策定、20年3月GI官民連携プラットフォーム設立とGIの実装化推進への体制をかため、その出発を世に問うシンポジウムを3月に予定していたのが、新型コロナ騒動でおくれて、やっと開催となったものです。

GIは森林に関連するインフラ整備でもあり、このサイトでも過去にも関心をもってフォローしてきましたグリーンインフラと生態系に基づく減災対策に関する議論 (2019/10/15)

プラットフォームの個人会員にもなって参加しました(シンポジウムはオープンな参加)。

(ウェブ上のシンポジウムとは)

コロナ対応で、みんなで一カ所に集まるのでなくウェブ上で情報共有するというイベントが試みられていて、情報発信のしかた、一般参加者の参加の方法などいろいろあるのでしょうが、このイベントでは・・・・。

・6月30日(火) パネルディスカッション 総再生回数:1,195回、最大同時視聴者数:425人
・7月6日(月) グリーンインフラ座談会 総再生回数:699回、最大同時視聴者数:373人

はじめと終わりに2回のネット上のリアルタイムの討議が行われました。

一般参加者は登壇者のZoom上の議論を見ることができます。が、質疑に参加するには別途メールで質問意見をおくって時間があれば登壇者がコメントする形。また、登壇者のプレゼンテーションは別途この期間中、いつでもネット上からビデオで見聞きすることができるようになってました。

終了後、結果がプラットホームの会員には公開されるのだそうですが、この作業を進めている7月14日の時点では構築中のようです。

(シンポジウムの情報発信)

私の見て聞いた限りでの、登壇者の情報発信は以下の通り。

演題  発信者  概要
挨拶 GI官民連携プラットフォーム会長
二宮 雅也
経団連自然保護協議会会長
プラットフォーム設立意図
グリーンインフラ社会実装の進展を期待
基調講演
 『グリーンインフラからグリーンコミュニティへ』
 涌井 史郎
GI官民連携プラットフォーム会長代理
東京都市大学環境学部特別教授
脆弱性を強める我が国と世界の共通課題→自然災害へのレジリエンスの獲得
社会資本の劣化=経済活動基盤の劣化
今なぜグリーンインフラなのか
日本人は叡智を働かせて自然共生の手立てを実践(してきた)!日本こそGI先進国になれる
 トピックス
『「暮らし」の観点からグリーンインフラを考える
 甲斐 徹郎
建築・まちづくりプロデューサー
今GI普及で大切なのは(重要性を説明することではなく)グリーンインフラを自分のこと化して考えるられるようにすること
都市市民の暮らしにとってのグリーンインフラ:熱環境のコントロール、クーラーなしで大丈夫、敷地でなく敷地のそとも、
「体感」がコミュニティーを生み出し、参画を進める、
 トピックス
『グリーンインフラを活用したあまみず社会の構築』
 島谷 幸宏
九州大学 工学研究院 教授
都市の水問題への対応:水循環の回復のため
「あまみず社会」という都市ビジョンを提示: 雨水を貯留浸透させ、分散型水管理、水と緑による有機的な社会
それを達成する技術、と広める方法の開発してきた。
 トピックス
コウノトリと共に生きる 〜豊岡の挑戦〜
 宮下 泰尚
兵庫県 豊岡市 コウノトリ共生部 コウノトリ共生課長
コウノトリが最後までいた豊岡町再生への道筋はーグリーンインフラの取組だ(今考えると)

命への共感ーコウノトリ住める豊かな環境の創造:コウノトリが住める環境は人間にとっても持続可能で健康なすばらしい環境
コウノトリ育む農法による水稲作付けが拡がり
 プラットフォームの活動内容紹介
『プラットフォームの役割』
 川埜 亮
国土交通省 総合政策局 環境政策課長
これまでの経緯(18年GI懇談会、19年GI戦略策定、20年GI官民連携プラットフォーム設立)
プラットフォームの会員状況と運営体制、三つの部会の概要
今後のスケジュール(来年3月シンポジウムなど)
関連予算(先導的GIモデル形成支援(2地域)、GI活用型都市構築支援事業)
 プラットフォームの活動内容紹介
『企画・広報部会の取組(部会長)』
 福岡 孝則
プラットフォーム企画・広報部会長
東京農業大学 地域環境科学部 造園科学科 准教授
 GIプロジェクト大賞(来年3月にむけ)四つの分野

@雨水貯留・浸透等による気候変動・防災・減災に関するプロジェクト、
A戦略的な緑・水の活用による豊かな生活空間の形成に関するプロジェクト、
B官民連携等による投資や人材を呼び込む都市空間の形成に関するプロジェクト、
C豊かな自然環境・景観・生態系の保全による地域振興に関するプロジェクト
 プラットフォームの活動内容紹介
『企画・広報部会の取組(部会長)』
 西田 貴明
プラットフォーム 企画・広報部会長
京都産業大学 生命科学部 産業生命科学科 准教授
 上記以外の企画広報活動を紹介
情報発信の充実(プラットフォームサイト上で情報発信の充実、メーリングリスト、パンプレット作成、オンラインセミナー開催)
アドバイザー制度の構築(GIを計画実施する癒えての課題に対応可能なアドバイサーを選定してリストアップ→養成応じた現地派遣など)
 プラットフォームの活動内容紹介
『技術部会の取組(部会長)』
 中村 圭吾
プラットフォーム 技術部会長
国立研究開発法人土木研究所 河川生態チーム 上席研究員
(兼 自然共生研究センター長)
ガイドラインを3年がかりで作成する
技術の内容は3つに整理
@要素技術(個別の技術の収集・整理・分類→要素技術集を作成)、
A評価技術(海外の事例を参考に、個別の評価と自治体などの地域の評価の方法)、
B計画技術(事例を基に、計画のポイントを整理)
その他に政策技術(政策提案))
ご参加を!
  プラットフォームの活動内容紹介
『金融部会の取組(部会長)』
 北栄 階一
プラットフォーム 金融部会長
株式会社日本政策投資銀行 地域企画部 課長
整備する際の資金をどのように調達するのか?を検討
投資家の事情も調査、ESG投資など(持続的な成長のためには長期的な視野が必要、個人でもふるさと納税など)ESGからみてもグリーンインフラは格好の材料

三つの取組:@金融制度(金融手法及び活用事例)紹介、A経済効果を把握・蓄積、B投資家、金融機関のESG投資の促進
写真は公開されているGI官民連携プラットホーム第一回シンポジウムパンフレットからいただきました。

たくさん情報ですが、大切な情報なので基調報告から復習を

(今、何故グリーンインフラなのか?)

涌井氏の回答は以下のとおり。

 気候変動による災害の激甚化、そして都市に求められる防災・減災や、潤いや憩いといった新たな都市像に対し、これまで緩和戦略の主体をなしたきた工学的営造物による社会的資本だけでは十分でない。さらにはその維持管理も大きな課題に!そこにGIによる適応戦略を導入し新たなコモンズをGIにより創出。あわせて機能の空隙を埋め補完的に対処する方策が重要。

災害リスクが多くなっている、今まで構築してきたグレーインフラの維持改修が大きな問題、という二つの課題を、自然のもつ多機能性を利用した新たな戦略でーということですね。

(グリーンインフラ+グリーンコミュニティ)

涌井氏のプレゼン資料にあった大切な言葉が「グリーンインフラとグリーンコニュニティ」(上記のコモンズをGIにより創出)。新しい戦略を理解する上での大切な言葉です。いままでのグレイインフラは公的な主体がリードしてきたが、グリーンインフラは都市市民当事者が体感しながら参画していく可能性がある。インフラができるだけでなくインフラを自ら喜んで維持管理してゆく市民のコミュニティができる。そしてそこでできたインフラは市民の共有物(コモンズ)!

(緩和戦略と適応戦略)

もう一つが、グリーンインフラは環境破壊を工学的手法で対応する「緩和戦略」だが、グリーンインフラは「適応戦略」、なのだそうです。この辺の含めて、グリーンインフラの社会実装をすすめるプラットホームの運動に、少し参加して、勉強していきます。

(保安林制度はグリーンインフラですよね)

メールで質問するというステップがあったので、質問してみました。

「自然環境の持つ多様な機能を賢く利用するグリーンインフラ!GI懇談会、GI推進戦略、GI官民プラットフォームと国土交通省がこのコンセプトを大切にそだて、実装化を進めようとされていることには、敬意を表します。
質問があります。水資源涵養や土砂の流出防備、土砂崩壊防備などに対応している保安林制度はこのプラットフォームの中で議論していく重要な内容だという理解でよろしいでしょうか?それともGI官民プラットフォームは国土交通省の所管分野のグリーンインフラを対象とした組織ですか?

何人か同じような質問をしたかどうかは解りませんが、シンポジウム最後にいつくか質問が紹介されたなかに、上記アンダーラインの主旨の質問が紹介されました。答は国交省の担当者から、「農地や森林も大切なグリーンインフラで・・・、国土交通省の所管のものだけが対象ではありません」との回答がありました。

(プラットフォームの会員)

会員になると、シンポジウムの期間中に提供されていた情報にアクセスできるようです(こちらから)。会費無料で色々な委員会にも参加もできるみたいなので、またタイミングをみてご紹介します。

ご関心のあるかたは、入会はこちらから

junkan6-10<GISympo1>



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